日曜日: いよいよ明日からの大勝負を控え,昨日土曜日に主治医の先生方から伺った詳細な病状・治療説明は次のとおり.
・胃の悪性腫瘍
・リンパ節への転移
・肝臓,胃の周りの腹水の存在
・胃に隣接する大腸への影響も有
説明にあたって,自分の CT による輪切りを見た.普通の状態を知らないので言われるがままであるが,胃の壁が厚くなっていること,普通ではなかなか形では確認できないリンパ節がはっきりと見えること,この黒い部分が腹水であること等伺った.後ろの壁には苦労してとった腸のバリウム写真が貼られていた.腸が体の中を渦巻いているのは知っていたが,胃の近くにも大腸があることを初めて意識した.確かに,一部細くなっている箇所がある!ここが詰まると駄目なわけね.
さて治療方針であるが,2種類の抗がん剤を使うことに.1つは TS-1 と呼ばれるカプセルを3つずつ1日2回.これを3週間連続投与.もう1つは,シスプラチンという薬でこれは点滴投与だそうだ.これは8日目に行う.なので毎日点滴につながれているわけではない.3週間投薬した後2週間は休薬期間となる.この計5週間で1クール.これを最低2クールやってもう一度検査するそうだ.ということは年内はぐっと我慢なわけね.
よくも主の知らない間にこんなに蔓延ってくれたものである.この状態では,外科的処置は難しいということで(多くの医者の漫画では施術している気がするけど,今週の真東輝は胃の全摘出とリンパ節手術をやる:笑),まず化学療法が選択された.全く異論なし.この病院に預けたからには全幅の信頼をおいてその方針に従おう.とにかく手術するにしてももう少し叩いてからということだ.TS-1 とシスプラチンの組み合わせは,広範囲の悪性腫瘍を叩くにはごく一般的な組み合わせで,最近の統計では,がん細胞が50%以下になる確率は75%と伺った.日本人は胃がんが多く,胃がんの治療は日本が恐らく世界最先端とも仰ってた.
さて副作用であるが,吐き気,食欲不振といったものから,肝臓障害,腎臓障害,血液障害,骨髄障害まで幅広く考えられるそうだ.抗がん剤というのは,良性細胞にも影響を与えるためで,こればかりは人によって違うらしく,その都度対応するしかない.また2週間の休薬期間を設けるのも,良性細胞を復活させるためだそうだ.ただ TS-1 というカプセル材を使用した時は,点滴よりも副作用は少ないとうかがった.先生は多分口内炎ができるくらいではないか,と仰ってたけど,まあそれは明日からのお楽しみ(苦しみ?か:苦笑)一方,シスプラチンを使った時の最も典型的な症状は吐き気だそうである(辛そうだ).家内が「髪の毛は?」と聞いたところ,胃がんの抗がん剤治療では抜けません,と言われた.これは内心嬉しかった.
結局は副作用の程度にもよるのだが,月曜からまず7日間 TS-1 を試し,8日目にシスプラチンを投与し副作用をチェックした時点で左程問題がなければ,退院し外来治療に切り替えましょうということになった.もちろん退院イコールこれまでどおりガンガン仕事をせい,ということではない.免疫力が落ちているから,家で大人しくしてろってことだ.最後に主治医の方から「スタッフ全員で全力を尽くしますから」と仰って下さった.こちらも「どうぞよろしくお願いします」と頭を下げた.ついでに「理工学部の先生がたも注目されています」と付け加えたのだが,これは余計な一言だったか.
昨日は二人の嬉しい見舞客が来てくれた(別々に).二人とも会社勤め時代の同僚と後輩で,仕事の関連は殆どなく,むしろ趣味で繋がった仲である.同僚の方はアナログ感覚満載で,入院が決まった翌日に「この勝負,手段はどうでもいいから,勝って下さい」と,手書きハガキを送ってくれた(嬉しくて泣きそうになった).入社が決まってすぐの集まりのときに,二人ともアコーステッィックギターが好きなこと,コーラスも好きなことが分かり,瞬間打ち解けてしまった.こちらが「ハードフォーク」だ言えば,「やはりアコースティックロックでしょう」と延々と米国の音について教えてくれる.不協和音の入ったコーラスにもこだわりがあった:笑.5年くらいデゥオをやったが,あの頃の時間は濃密だったね.
二人ともあまり演奏はしないのだがジャズも好きで,実は2日前の金曜日も,一緒に東京国際フォーラムに,カルテット (ハービー,ロン,ウェイン,ジャック) を聞きに行く予定だったのだ(その三週間前にはパットとブラッドにいった).20代の頃は本当によく連れ立ってコンサートにいったが,その後お互い留学や転職を繰り返して45才くらいまでは殆ど音沙汰なく過ごした.ここ数年,またより?を戻して,一緒にコンサートに行ってるのだけど,笑うくらいに,お互い変わってない.いつか暇になったら,また Ventura Highway, Horse with No Name をやりたいものだ.こちらの腕は落ちてないから!
コンサートは最高に格好よかったそうだ(そりゃそうだろう).そしてこちらの予想では,コンサートパンフレットを買って来てくれる筈だったのだが,残念ながら売り切れだったそう.かわりに,ハービーがジョニーミッチェル(同僚は彼女も大好き)をフィーチャした 新しい CD を持って来てくれた.如何にも彼らしい選択だ.Many Thanks. 今日のことは忘れないだろうな(村上春樹のジャズネタ本もよかった!).
もう一人の後輩の方は,大学の部活(一応体育会)の後輩でもあり,所謂プロレスオタクで,某プロレス団体の放映番組はすべてビデオで持っているくらいのマニアだ.こちらは,ただの一般的なファンであるが,彼とはよくプロレスや格闘技を見に行った.(さすがに忙しくなった最近は行かないけどね).大学時代,お互いスポーツ刈りで後楽園ホールのリングサイドで観戦し,場外乱闘の際,普通の観客が逃げるところ(自分は逃げた)を,凶悪レスラーの背中を叩こうとしていた輩である.さすが後輩である.お見舞いに格闘技雑誌他を持って来てくれた.このセンスはキミしかあり得ない.すばらしい.ありがとう.
写真は,今回は二つ.昨日いただいた CD, 本,格闘雑誌,それから昨日今日のキャンパス祭で使われた,研究室のシンボルだそうである.このあたりのパロディのセンスは毎年のことながら最高だ.
明日から抗がん治療が始まるということで,今日は全部で10名を超える見舞客があり,午後は明日らの活力をたっぷり注入いただいた.母,家内の方のご両親,長弟夫婦,近くの研究室の秘書さん,研究室出身の助教さんたち,それからびっくりだったのが,上記同僚が当時の仲間に連絡してくれたらしく,2名本当に駆けつけてくれた感じだった.大感謝.なんか子供の誕生会のときより一杯プレゼントをもらった気がする.中には70年代のロック雑誌から,最近の写真集まで,ここにはもう掲載する余裕もないが,明日からベッドで楽しめるものが机上に満載である.すっかり頑張る準備が整ったかな.大感謝!!
夜になって看護師さんがやってきて,ご飯の前に手洗いしました?と聞いて来た.ゲゲッ,以前の会社で一緒だった女性との話に夢中になり忘れたやんけ,こういうのは習慣ですからね.はい.力だけをつけてもだめ,細心の注意も必要ということだ.少し反省.明日から初めての体験,化学療法が始まる.調子が悪ければブログは更新しないし,良ければするかも知れない.どうなるか分からないけど,左程不安でもない.戦い前夜として,多くの方から十分な活力は得た.一人で闘うわけではない,後はなるようになるだろう.See you soon.
2007年10月21日日曜日
決戦前日ー大感謝 day
投稿者 ngcoryell 時刻: 19:10