水曜日: 火曜日の夜には,気分の悪さも収まって来た.月曜の夜はあまり眠れていないので,それなりによく眠れた(夢の中でブログを書いているのにはおどろいたけど).朝の気分も上々ということで,シスプラチン(点滴による抗がん剤)の副作用は大部分去って行ったみたいだ.
月曜日の昼前から火曜日の昼前まで,ずっと点滴につながれていた訳だが,実際に抗がん剤を入れていたのは2時間程度.その前後に吐き気止めの薬も体に流してくれる.月曜の夜までは(多分吐き気止めのせいで)あまり気分の変化は見られなかったので,少し調子に乗りすぎたのかもしれない.本の読み過ぎ,家内の差し入れのカツサンドを食べる,Web サーフィンなど.そのしっぺ返しが夜中に来たのだと思う.
月曜の夜中は,気分の悪さというよりはむしろ精神的なプレッシャがきつかった.点滴に繋がれている自由のなさからくる不安感,次から次へと湧いてくるネガティブな考え,寝てもすぐに目が覚める悪循環.今思い出しても大変な夜だった.
火曜日の朝は,いろいろと忙しく、検査や部屋の掃除やベッドシーツの交換などで気が紛れれていたのだけど,昼前から,少し体を横にしたところで,昨日のブログの状態に陥った.とにかく何のやる気もでず,ひたすら気分が悪い.これが夕方頃まで続く.先生他,人と話をしているときは瞬間忘れるのだけど.いや,この状態が連日続くと精神的に参るだろうね.事実,看護師長さんが家内にそっと耳打ちしたのが「うつ病になる方が多いので気をつけて」,とのことだった.
その他,2回程吐き気を催したとき(実際は吐かない)に,同時に大量の空気を吸い込んでしまい,ゲップを一気に出せない身には少しずつ細々と空気を吐き出すしか方法がなく,このときは肉体的にも精神的にも落ち込む.胃が全体収縮運動を一回した後で,徐々に動きを落ち着けて行くような,そんな感じ.胃にとてつもなく負担がかかる.
とまあ食欲はゼロで,病院食には箸一つつけれず,体重はまた減少.飲み薬に対しては食欲は改善していたのに,この点滴の前後でのこの気分の違いに驚く.でも二夜あけた今日気分は上々.(幸い盲腸で入院していた助教の方も無事今日退院することになったようだ.よかった.おめでとう.)
ところで,この点滴による副作用はともかく(それでも他の酷い方に比べると全然ましなようだ)として,飲み薬による副作用があまり見られなかったこと,加えて,血液検査の結果が悪くないこと,発熱がないこと,から明日正式に退院することになった.次の点滴は5週間後であり,それまでの間は3週間 TS-1(飲み薬),2週間休薬となり,十分に自宅療養(週に1回?外来で診察)可能ということらしい.(僕もそう思う)少々ホームシックになっていたのでこれはありがたい.5週間後の点滴の際に再入院するかどうかはこれからの体調次第.
さてこの間,外来の際にお世話になる先生とお話をさせていただいた.この病院の抗がん治療の責任者で,うちの大学のトップの方や前理工学部長も毎年診ておられるとことだ(定期検診).年は僕より5才下,すごく気さくな方だが,言うことははっきりと言われる.「今の治療法で効くはずです」「逆に効かなかったら,ちょっと困る(正直だ!)」,「こちらは情報を全部開示する,だからそちらも包み隠さずすべて話して下さい」すべて了解.闘いは本当に始まったばかりだが,最初のコーナーはうまく曲がれたような気はする.
おまけ: このブログに掲載されている写真は,殆どが Nokia N73 でとったものであり,それを bluetooth で MAC に送り iPhoto で加工して up している.とは言っても,作業としては2,3分だ.今日の写真は,この点滴の山を乗り切り,とりあえず退院祝い?に自分で買った,Windows Mobile 6.0 を掲載したスマートフォン(PDA)HTC-X7501 である.sim free なので今持っている携帯のカードを入れて使うことができる.MAC との連携も大丈夫な筈.明日は無理だろうが明後日は早速これで遊ぶ予定.望むらくは,早くこれを持って本当にモバイルしたいものだ.
2007年10月31日水曜日
外来治療へ
投稿者 ngcoryell 時刻: 16:45
2007年10月30日火曜日
点滴終了
24時間の点滴は無事終了.でも闘いは継続中.敵(心強い味方でもあるのだが)は思ったよりも手強く,月曜の夜から,食欲,本を読む気分,音楽を聴く気分すら阻害する.ひたすらすべての情報をシャットダウンして横になり目をつむるだけ.早く睡魔よ来い.朝はすっきり迎えたい.
投稿者 ngcoryell 時刻: 17:45
2007年10月29日月曜日
点滴中
「不思議なもんで、なんか新しい薬と闘うような気がしているけど、そうじゃない。薬は味方で、でも強力すぎて、味方も苦労する、っていうやつなんだよね。なんていうか、ほら、いるじゃない、チームには溶け込めないけど、イザっていうときにすごい活躍するヤツって。」
「だからそいつにはおおいにがんばってもらって、その強力なチームメートとはできるだけ仲良くするっていうことだよね。みた目のイメージとしては、レッドソックスのマニー・ラミレスみたいな感じかな。ボンズもイメージにちかいけど、なんかこうラミレスの方がいいヤツっぽいでしょ。髪型がすごくてさ、ユニホームもダボダボ。ヘルメットなんかもえらくきたなくて、たぶん強烈な悪臭を放ってる。でもほんとにイザっていうときにすごい活躍をする。」
「Daisuke、心配するな、外野にうたせれば必ずとってやるし、いくら点をとられても、俺が絶対とり返してやる」みたいなことを、大事な場面をむかえたマツザカにボソって口走る(その息はタバコ臭いんだけどさ).」
これ我が良き友からのメイル(不許可掲載御免).ありがとう頑張る.点滴続行中.
投稿者 ngcoryell 時刻: 15:57
2007年10月28日日曜日
Don't Worry, Be Happy.
日曜日: もう3度目の日曜日.今日は台風一過で日当り良好,快適な日だ.昨日は久しぶりに快眠.途中あまり起きることなく,時計をみたらもう午前4時.これまではだいたい2,3時間で目が覚めていたので,これは大進歩.また見た夢が傑作.フリーフォール(無重力実験)の中で治療するというもので,いの一番に参加.無事克服して生還するという夢でした.フリーフォールは勘弁して欲しいが,結果には大満足.
明日からの点滴治療は1日勝負だそうだ.薬自体は少ないのだけれど,何リットルもの水も入れるためと伺った.いよいよ僕も点滴を持ったままトイレ行ったりするのね.新たな別の薬という意味では効果に対する期待感大なのだけど,でもどうしても副作用も気になる.そして自分だけは副作用が少ないとか言い聞かせる.
副作用と言えば,1週間程経過すれば,肌が少し弱くなる等のことを言われていた.これはちょっとそうかな,とも思う.ちょっとかさかさ乾いた感じがする.家内に寝間着と首がすれ違うところに発疹ができてると言われた.でもそれほどかゆくないし,そこだけなので全然問題なし.
知り合いの方が,「銀座をあるいていたら,そっくりだたのよ!」と買って送ってくれた.こいつ「Don't Worry. Be Happy!」って歌をうたってくれる.お腹出して寝そべっているとことまでそっくりだ(写真のとおり).歌ってくれるのは比喩でも誇張でもなんでもなく,仕掛けボタンを触ると再生されるのだ.明日つらかったらこのボタンを押そうではないか(看護師さんに頼む?).
今日も後輩が,一杯くだらない系(失礼)の雑誌を一杯持って来てくれた.明日は今までよりもベッドにいそうなので,頭を使わない雑誌は助かるなあ.ほんとこの部屋には,いただいた本と雑誌が溢れている.それから,10月24日,ついつい,電脳系小物(SIM Free 携帯+ PDA)を一つ Amazon で注文してしまった.さっそく家内が病院に持って来てくれたが(仕方ないねえとあきらめ顔),明日のことも考えると遊ぶ余裕もないので,あきらめて棚にしまった.早く点滴よ終わってしまえ.
いよいよ明日,たかが点滴されど点滴だ.念のためブログはお休みにしようと思う.妙な義務感で頑張って書くのも変だしね.その翌日に(元気だったら),あるいは後日まとめて体験記を書くことにしよう.といいつつ書くような気もするけど....:笑
投稿者 ngcoryell 時刻: 18:47
2007年10月27日土曜日
細くなる食
土曜日: 入院する1週間前まではごく普通に食事がとれていたのが,健康診断日の前後から食べた際に何か食道でものがつかえる感じがしていた.結局それもそのはずで胃の一部が腫瘍により機能していなかったためだ.入院してからは、検査中は,頑張って食事を全部とっていたが,だんだんとそれも負担になってきた.胃をとった人の言葉がわかるようになった.
一旦気になるとその他色々なことが気にかかる.例えば「ゲップ」も出にくい状況.これは結構不快で,横になって出そうで出ないときのやきもきした気分は睡眠を阻害する.赤ん坊がゲップを出せないときに,背中をなぜてあげることがあるが,本当にそうしてもらいたいと思うときもある.(体の固くなり自分ではとうてい無理:苦笑)時間をかけて大人しくしていれば,そのうち出せるのだけれど.
抗がん治療が始まり,気分が悪くなったり吐き気がすることは殆どなく,そのあたりは恵まれているが,食欲不振は顕著になってきた.胃の機能低下に加えて抗がん治療の影響だろうか(マニュアルにもそうかいてあった).ご飯の匂いを嗅ぐのもつらい状況.病院の先生方,看護師さん達は手慣れたもので,とにかく食べ易いものを何でも,病院食を食べる必要はないのだから,と繰り返しアドバイスされる.
ついに昨晩から茶碗の蓋を開けるのも辛くなってきた.素直に白旗を上げ,今朝朝食前にコンビニで,食べ易そうな小さなロールパンをゲットした.幸い,果物やゼリーは冷蔵庫が豊富にある.口当たりのいいものは皆オーケー.匂いのキツい料理は「ほら食べてみんかい」と迫り来るようで,プレッシャーがきつい.この状態は予想外だった.
加えて食道近くに(多分)腫瘍があり,時折,食べ物を飲み込んだとき,特に大きなものを飲み込んだとき,お茶や水で流し込んだときに,メカニカルに刺激するのか,この2,3日,鋭い辛い痛みが走るようになった(しばらくすれば収まる).これを逃れるには,本当に食べ物を小さくして,少しずつ良くかんでゆっくりと胃に流し込むしかない.おかげで,全く大した量ではないのだけれど,時間をかけてゆっくり食事をするようになった.
写真は,健康診断から今日までの体重の変化である.食が細くなる,とはよく言ったもだと思う.身長からすればまだまだ「メタボ」ボティであるが,抗がん治療を開始してからストーンと落ち始めているのがわかる.ある程度までは shape up で嬉しい?が,それ以上は落ちないように頑張らなきゃ.今の救いは,果物がまだまだ美味しいことだ.(iWorks の Numbers で作成.default でできる絵がエクセルより素晴らしい)
このロールパンに変更作戦が大成功し,昼食,夕食とも量はともかく,苦痛ではなくしっかりと食べれた.体重低下を食い止めれるか!鋭い痛みは時々走るが,胃の重たさ自体はかなり軽減されている.トータルではいい感じではないかと思う.
夕方から夜にかけて,他の学科の先生,卒業生,学科主任の先生が見舞いに来て下さった.やはり外からの空気が一番.あっと言う間に時間が経過する.卒業生と学科主任の先生は年末恒例のコンサートでご一緒する仲だ.(コンサートについてはまた別の時に).卒業生は何と卓球の雑誌を,先生は癒し系のクラッシック音楽を差し入れて下さった.素直に嬉しい.さっそく iPod に入れよう.
今日いろいろ話をしている中,お近くの方でやはり民間療法で回復した人の話をうかがった.また良い意味でのジンクスの話もうかがった.また近しい方が全くこちらと同じ状況で抗がん治療からスタートする話もうかがった(一緒に頑張ろう).すべてが力になる.大感謝.
投稿者 ngcoryell 時刻: 20:05
2007年10月26日金曜日
入院スパイラル
金曜日: はや入院2週間目となる.昨夜は,ちょうど2週間前電話にて最後の外来での診察(宣告?)をして下さった先生が,久しぶりに顔を見せて下さった.アメリカ,関西と出張が続いていたそうだ(なんか自分とだぶる).「寝返りをうったときに,腹の向きで痛さ,不快さが変わる」と言うと,それについては一笑に付して「それは気のせい,気のし過ぎ」こちらは「体の中心まわりの胃の重さのモーメント」を持ち出して説明しようと思ったのだけど(アホちゃうか).実際そう感じるのであるが,先生に言われて余り気にせず少しお腹の下に布団を引いてみると快適.ちゃんと眠れた.
実は,日曜日にお見舞いに来て下さった義父も急遽入院することになった.義父は十数年前に大病を患っており,半年以上の闘病の末無事退院され今日に至っている.ベストではないにせよ,そこは病気とうまくつきあいながら,海外旅行,国内旅行と「そんなに慌てて行かなくても?」と家内と話すくらい,活発に行動されていた.が,最近また少し調子が悪いともうかがっていて,日曜日お会いしたときにはすっかり痩せられており,「どちらか病人か分からないね」と周りからからかわれていた.
悪い予感は当たるもので,今回も消化器の一つがパンパンに腫れているということで手術をするようだ.食べた時に食物が胃腸を通って行かない様子が,お互いそっくりだったので,こちらも病人ながら心配に思っていた.義父も元大学教員であり,引退して自分 homepage を立ち上げるなどインテリジェンス溢れる方である.義父が自分のホームページの一角に,長女一家(つまり,うちの家庭のこと)のページを作成したところ,google などで僕の名前を入れると必ずこのページが上位でヒットするようになった.御陰で,関係者にはうちのプライバシーが丸見えだ.うちの子供達の写真や小さい頃の作品群も掲載されていたが,さすがにそれらは本人達の反対に会い今は削除されている...とにもかくにも,義父の早い回復を心よりお祈りいたします.
というわけで,朝から色んな意味で気分がすぐれず,昼食は完全にアウト.妊婦さんのつわり状態?のようになり(耳学問ですが),ご飯の匂いを嗅ぐだけでも苦痛.あっさりギブアップして横になる.横になればいつでも眠れるのが得意技.少し寝て村上春樹の音楽本を読んでいると,「本日前首相の主治医による回診がある」とのアナウンスがあった.ちょっと緊張したが,ごく普通のおじ(い)さんによる問診と触診だった:笑.でもすごく柔らかい&優しい.声もタッチも.安心感を感じた時間だった.それを見つめる軍団の目は何か妙だったけどね.
その後すぐ,10年くらい研究のスポンサーをしていただいている会社の社長さんが来られて,退屈でしょうと映画の見れる携帯ビデオ機器を貸して下さった.これは助かる.特に夜の9時間消灯時間に威力を発揮するだろう.その後しばらくして,慶應の若い先生二人プラス研究室の秘書さんが来てくれた.この3名本当に仲が良く,映画「明日に向かって撃て」に出て来た男性2+女性1の雰囲気がある(ちょっとほめ過ぎ?ちょっと古いかもね).これまた色んなグッズや本,のどごしの良いものを差し入れて頂いた.あまりに楽しく時間が過ぎて思わず引き止めてしまった.ついでに話しながら夕食も頑張って,ご飯はあきらめおかずを中心に食べた.今日は入浴するので,その後いただいたみかんを食べよう.
写真は,先生の一人が作ってくれた星2つ.これは結構丈夫なんですよ.是非構造解析して下さい,と言われる.いやいや今はただ祈るのみ.
投稿者 ngcoryell 時刻: 20:53
2007年10月25日木曜日
癒しぐま
木曜日: 今日は朝8時までに先生が次々と診察に来て下さった.昨晩は気分も悪くならず比較的良く眠れたと伝えると,いい感じですね,と言ってくれる.インターンの学生さんに,じっくりお腹を触診してもらった.今のところ彼の毎日の練習台だ.しばらくして,「あの,多分ですよ,多分ですけど,お腹のはりは減ってますよ,ぐるぐるはしてますが.」嘘でも?嬉しい(本当であって欲しいけど).
ところで,いわゆる教授を中心とした回診が毎週行われることになっている.残念ながら入院してからはまだ経験していない.一度白い巨塔の一シーンのように,ぞろぞろと廊下を歩かれているのを拝見したことはあるが.実は,病気の箇所が我が国の前首相と同じであり,この教授回診の先頭は,前首相の主治医(テレビでもお馴染み)だそうだ.早くお会いしたいのだが,学会でお忙しいらしく、今週も空振りか.
昨晩,このフロアの責任者の先生がいらして,しばらく PC 談義.自分の知る限り5年くらい前までは,医療の現場と言えば MAC だったはず.特に画像処理から統計処理まで,よく MAC の雑誌に特集掲載されていた (NIH Image とかね).ところが XP が出始めてからは,それほど違いが無くなったらしく,この病院はすべて windows でシステムが作られているそうだ.ずいぶんと昔,坂を上ったところのキャンパスの保健管理センターのシステムが MAC で構成されており(LC とか使ってたような),健康診断の記録を MAC に打ち込んでいるのを見て感心した記憶がある.ここももう変わったのかな.最近の intel MAC は,同時に両方使えるんですよ,と話したら,大層驚かれていた.
今日はも吐き気を催す程の不調さはなかったが,昼食頃お腹がちょっと痛み始めた.いつものような腫瘍のあたりだけでなく,下腹も含めて「差し込みが!」といった感じである.副作用からくる下痢,便秘もあるようなので,その影響かも知れない.先生曰く,やはり中で薬が闘い始めてるんですね..その影響でしょう,とのこと.昼食はせっかくパン食(家にいるときは朝食がパン.ここでは3食だいたい和食.まれにパンの時が有る)だったのに,さすがに食欲なく1/2でリタイア.
週刊誌を買いに売店へ(青年漫画).いつもであれば少しでも運動しようと階段を使うのであるが,今日は歩くとお腹に響き,上り下りだけでなく真直ぐ歩くのも心もとないので,エレベータを使用(気分はへこむ).いやあこれだと卓球は苦しいなあ(今は当たり前だろう),更にへこむ.
部屋に戻ると日当りがよくなりついうとうと.看護師さんが入って来て,「化学療法のオリエンテーション始めますよ」もう4日以上やってる.「点滴の際の注意事項」と「アレルギーの注意」を言って下さい.実はこのオリエンテーション,これまであまりされてなく,色々問題があったそうだ.それで「徹底する」ことになったらしい.アレルギーの中には発疹や喘息だけでなく,ぼーっとする,眠くなる,というのも含まれるそうだ.
注意事項の中に「点滴をしながら移動するときの注意」というのがあり「点滴のスピードが変わらないようにての位置を調整する」,具体的には普通に「手を下ろせばいい」のだそうだが,昨日教えてくれた可愛い看護師さんは「手の位置(高さ)が変わらないように」とのことだった.夕方先輩から指摘されたそうで,慌てて部屋に飛び込んで来て,「間違えたことお教えしちゃいました!昔はそう習ったんですが..」素直さに感心.でも僕は貴女の方が正しいと思うけどね.この実験は来週月曜日.
さすがに写真ネタが無くなって来た.夜は見えないのだけど,昼間ベッドでうつらうつらしていると,誰かに見られている気がする.ふと気づくと家内の両親からいただいたバスタオルであった(癒し系!).最後に朗報.あんちゃん先生が入って来て「骨に転移はない」とのこと.へこむ中にもいい話はあるものだ.
投稿者 ngcoryell 時刻: 18:53
2007年10月24日水曜日
何でもあり
水曜日: 夜になると一斉に電気が消え,音も無くなる.そうすると自分の神経は,どんな些細な体の変化も感じ取ろうと鋭敏になる.昼間人と話しているとお腹のことは忘れるが,夜になると神経はそこに集中する.昨日、一昨日と治療の効果かどうかはわからないが,夜中に胃があばれることは少なくなった気がする.神経は痛みよりも,副作用の方に向いているようだ.昨夜はお腹の中のガスの貯まり方が気になり,寝付きも悪く,初めて寝坊.朝初めて看護師さんに起こされた(6時).
多少は学習したので,すぐに起き上がり MAC を立ち上げたが,一度にはメイルや web を見ないで少しずつチェック.頑張れ,ファイトメイルを拝見.俄然元気な気分になって朝食.ゲゲゲゲゲゲ.納豆だぁ(典型的な食わず嫌い).あっさりと KO されそうになった:苦笑.ひじきと野菜を中心に食事修了.今日は骨シンチの検査がある.アイソトープを注射して午後写真.これは念のため骨にガンができていないかのチェック.Yes だったら,ダメージ大きいだろうなあ.
さて,入院前までは,ガンと闘う人たちのブログを読ませていただくことがあったが,今はガンに関する情報収集を含めて,あまりチェックしようとは思わない.情報過多に一喜一憂するよりも,この病院に身を預けたので,素直に従おうという気持ちだろう.その方が精神的に楽だしね.昔やんちゃで歯のケアをあまりしなかった頃があり,酷くなった後で一生懸命歯医者に真面目に通いだした.歯医者の先生いわく,「こんなに真面目に治療に来るなら,なんでもっと早く来ないの!?」んー,結局はこれか.
一方で,身内にはいろんな方がいて,体に手をかざして光りをあてましょうか,とか,この健康茶でおばさんは治った,とかね.早速矛盾しているようだが,このような気持ちはありがたく頂くことにしよう.「勝ち方はどうでもいいから,必ず勝って下さい」とは,先日親友からもらった葉書に書いてあった言葉.「何でもあり」プロとしては,この言葉嫌いではない.(ボクシングの亀田家はちょっといただけないが)
ガンというのは治るための薬がなく,例えば検査中でまだ特別な治療を始めていないとき,普通に悪い細胞は浸食活動していると思うとちょっとブルーになる.何もしてないよりは,何かしている方が,何もしないよりもいいのではないか,と思うようにもなった.
といわけで,神頼みとか民間療法とか,にすがる人たちの気持ちも,今は十分に分かる.お茶を飲んだだけで,悪い細胞が消滅,なんて素敵ではないですか.まあ自分からは情報収集しないが,親戚が「このお茶のめ」と持って来たら喜んでいただくことに決めた.実は先週末から,姉の申し付けで家内が煎じて持ってきてくれている.写真は,うちのおばが「これと共にガンを克服したというお茶」の入った魔法瓶である(タヒボ茶という).更に今日は光り業(わざ)をもった義弟の妻も見舞いに来てくれた.いや手かざしって結構熱を感じる.先生が入って来たらどうしようかと無茶緊張した:笑.
途中,暖房器具の修理等もあり,今日は盛りだくさんで,副作用について意識する間がなく過ぎて行った.◯だ.食欲はまだ左程でないが全く食べれないわけでもない.主治医さんが言うように,体もだんだん順応しているのだろうか.ところで,研究室を任せて来た助教さんが,急遽盲腸で緊急入院した.うーんプレッシャかけすぎたか!? wish his sooner recovery. でも、今度は残るメンバーで研究室を見るからとの連絡が来た.うー泣かせる.余計なことは指示せず皆に任せよう.独立自尊.
投稿者 ngcoryell 時刻: 18:20
2007年10月23日火曜日
初めての波
火曜日: 昨日は胃も比較的おとなしく,良く眠れた.良く眠れたら眠れたで,背中中が痛い.贅沢な話だ.よっと体を起こす時,背中の痛みに加えてメカニカルにお腹の痛みも生じるので,この瞬間が病人みたいで(病人か!)情けなくなる.6時に起きて,いつものようにメイルを処理し,web を見ていたら,少し気分が悪くなって来た.小さい字を見すぎたか.窓をあけて fresh air を少し入れて、また横になる.落ち着いて来たところで採血.
採血のときに右手を見て気づいた.ID がない.そうこの病院では,各人手首に ID をつけ(写真参照),診療や検査を受けるとき本人確認を行う.バーコードが見えるが,特に IT を駆使した情報処理はなく,ここでもアナログに「名前と生年月日を言って下さい」「じゃあ ID を(目で読んで)確認しますね」といった感じである.で,採血の時に ID がなかったのである.これは24時間風呂のときも常につけてなければならない.でも看護師さん慌てず騒がず,こちらの名前を信じて採血してくれた.まあ病状の重い方,お年寄りの方のためだろうね.ちなみに,ID はベッドの上に落ちていた.寝相悪し.
今日は特に検査などなく,1日部屋でゆっくりできる.途中害虫駆除に部屋に業者が入るそうだ.朝8時までに,だいたいインターンの学生とあんちゃん先生と二人から診断を受ける.学生さんの触診も1週間経つとさすがに慣れて来て,最初はハンマーで殴るような感じだったが,今は非常に滑らかになった.お腹だけでなく,首筋や足先まで見てくれ,前日から何か変化がないかチェックしてくれる.我々の解析と同じだ.やはり常に全体まで見てバランスを判断しなければ(職業病!)
食事中,主治医の先生がめざとく9枚の写真立てを発見.息子がママ似で娘が父ちゃん似であることが即座にバレる.娘は今年受験で,物理や数学を家庭教師しなければ,という話になり,「なら早く退院しましょう.来週中頃ですかね.」と,退院がやたら現実味を帯びてくる.一方あんちゃん先生(卒業後3年とわかる.まだ30前だ!)は,「やはり来週月曜日の点滴が勝負ですね..」と,プレッシャをかけてくる:苦笑.食後 TS-1 を3錠服用.また少し横になろう.
River を聞きながら横になっていたがまた少し気分が悪くなってきた.これがそうなのかと思いつつ,ただ吐き気まではいかない,ソファに座って,週刊誌や入院に備えて買いためた推理小説を読んだ.気分は左程改善せずこれで昼食を食べるのはきついね.で昼食はさんまに肉じゃがに野菜とフルーツ.結構責めてくるなあ,口あたりの良い野菜とフルーツから手につけ,後は義務感のようにご飯と肉じゃがを1/3食べて終わり.食後の方が気分は落ちつく.
食後,推理小説(半落ちってタイトル)を一気に読む.結構感動したが,その余韻に浸る間もなく,また波がやってきた.吐き気まではいかないが,むかつく感じ,屋形船で酔う(酒にじゃないよ)一歩手前の状況.横になって目を閉じて収まるのを待つ.これがなかなか収まらない.夕方まで大人しくして,ままよっと起き上がる.風にあたるのが最良かも知れないね.また復活仕掛けた頃,主治医の先生が来られたので,強がりはなしですべてを話す.「酷かったら薬を出しますからね.」
ここに来ていろんな闘いがある.食欲のない時の食事.とにかく体力保持のために食べなくてはならない.看護師さん,先生とも,普通食なのだから病院の食事が食べにくければ,コンビニでも,奥様でもとにかく食べ易いものを食べて下さいね,と言ってくれる.息子はチューブ,ゼル状のカロリーメートはどうか,とアドバイスをくれる.が,当面の課題は目の前の食事(これしかないから).たまご豆腐に八宝菜とご飯,頑張って半分弱かな.頑張った.後でのどごしの良いゼリーを食べよう.
食べると完全復活.不思議なものだ.で,このブログを書いている.今週は見舞客がない予定だったが,昨夜7時,となりの学会で仕事を終えた,声の大きい(ちょっとがさつ?),お互い計算機好きで結構馬の合う,同じ学科の先生が突如乱入してくれた.おい抗菌は大丈夫か?ひとしきり情報交換した後怒濤のように去って行った(ありがとう).今朝は,ドイツの計算力学のトップの方からお見舞いのメイルも届いた.ベスト&ワーストフレンドである岐阜の先生(Japanese バーバリア)から元気づけてやってくれい,と連絡がいったらしい.誠に光栄,これまた気分は最高であった.
今日は,副作用の一つの波を経験した.瞬間に起こる副作用と積み重ねによる副作用があるのだろう.今からまた薬の時間である.積み重なる副作用は嫌だなと思いつつ,一気に飲む.あとは寝るのだけが仕事.明日もブログを書きたいものだ.
投稿者 ngcoryell 時刻: 18:59
2007年10月22日月曜日
治療開始
月曜日: 今日から治療が始まる.昨日あたりから,先生,看護師さんから折にふれ「いよいよ月曜日からですね」と言われてきた.「昨日は緊張して眠れましたか?」とも聞かれたが,いつもどおり寝付きは良く,胃の重さに何度か目覚めたが,結構眠れたと思う.夢の内容は今ひとつ明るくないけどね.
9時10分: TS-1 3カプセルを経口投与.写真のとおり普通の大きさ.
10時10分:1時間経過.体が上気づいてきた,少し気分が悪くなって来た,すべて気のせいだろう:笑
11時10分:2時間経過.X 線検査のために廊下を歩く.少々呼吸が荒い?頭がふらふらする.これらも皆気にし過ぎのためか.意外に精神的に弱い?お腹と胸の間くらいで戦いが始まったのか,少し痛みをもってぐるぐるしている.
12時10分:食事.後で吐き気が出るといやだな,と思いながらも2/3は完了.食べる量は着実に減っている.食後も特に気分は変わらない.
13時10分:少しけだるい感じがして横になる.うつらうつらする.体がほてっているのは,気温が高いためか,体温が高いためか?ちょうど検温.36度5分平熱.
ここで眠る.家内と息子が来て目が覚める.ともあれ,薬そのものが体に合わず,即吐き気だ,発熱だということにはならないで良かった.しかし,看護師さん曰く,やはり少しずつ健康細胞に影響を与え,毎日毎日徐々に機能を低下させる,一方で体も少しずつ慣れていくので気づかない場合も多い(全くその通りだろう)とのこと.こればかりは定期的な血液検査で慎重にチェックを要するようだ.
今日は夕方前に,部屋(特にベッド周り)を消毒に来たし,食事の前後,外出前後の手洗い,うがいについては、本当に再三看護師さんから注意される.抗がん剤については,毎朝晩,必ず服薬したかどうかチェックにくるそうだ.後で,主治医の先生からうかがったのだが,このフロアには,血液の抗がん治療をされている患者さんもおられ,その方々は,もっときつい薬で治療されており,その場合は,清潔,抗菌はもう徹底的にするそうだ.生花も厳禁.でも消化器系は,それほどでもないので,花も構わないですよ,看護師さんはフロア全体を見てるので,どの患者にも公平に厳し目に注意するようですが,とのことだった.
冷血美人女医さんも,抗がん治療のあたりから,何度となく笑みを見せるようになった.やはり患者をリラックスさせるためか.これは単純にこちらも和むね.やっぱり.これから夕食を迎えるが,今の時点では,なんとなく食欲が湧かないくらいで,後は昨日までと左程変わらない気がする.とりあえずホッとしたが,でも食後の後薬を飲んだらまた状況が変わるかもしれないし...やはり精神的に疲れる.まあ現状には◯を出して、今夜を乗り切り明日からに備えよう.今日はこれでお終い!
投稿者 ngcoryell 時刻: 17:09
2007年10月21日日曜日
決戦前日ー大感謝 day
日曜日: いよいよ明日からの大勝負を控え,昨日土曜日に主治医の先生方から伺った詳細な病状・治療説明は次のとおり.
・胃の悪性腫瘍
・リンパ節への転移
・肝臓,胃の周りの腹水の存在
・胃に隣接する大腸への影響も有
説明にあたって,自分の CT による輪切りを見た.普通の状態を知らないので言われるがままであるが,胃の壁が厚くなっていること,普通ではなかなか形では確認できないリンパ節がはっきりと見えること,この黒い部分が腹水であること等伺った.後ろの壁には苦労してとった腸のバリウム写真が貼られていた.腸が体の中を渦巻いているのは知っていたが,胃の近くにも大腸があることを初めて意識した.確かに,一部細くなっている箇所がある!ここが詰まると駄目なわけね.
さて治療方針であるが,2種類の抗がん剤を使うことに.1つは TS-1 と呼ばれるカプセルを3つずつ1日2回.これを3週間連続投与.もう1つは,シスプラチンという薬でこれは点滴投与だそうだ.これは8日目に行う.なので毎日点滴につながれているわけではない.3週間投薬した後2週間は休薬期間となる.この計5週間で1クール.これを最低2クールやってもう一度検査するそうだ.ということは年内はぐっと我慢なわけね.
よくも主の知らない間にこんなに蔓延ってくれたものである.この状態では,外科的処置は難しいということで(多くの医者の漫画では施術している気がするけど,今週の真東輝は胃の全摘出とリンパ節手術をやる:笑),まず化学療法が選択された.全く異論なし.この病院に預けたからには全幅の信頼をおいてその方針に従おう.とにかく手術するにしてももう少し叩いてからということだ.TS-1 とシスプラチンの組み合わせは,広範囲の悪性腫瘍を叩くにはごく一般的な組み合わせで,最近の統計では,がん細胞が50%以下になる確率は75%と伺った.日本人は胃がんが多く,胃がんの治療は日本が恐らく世界最先端とも仰ってた.
さて副作用であるが,吐き気,食欲不振といったものから,肝臓障害,腎臓障害,血液障害,骨髄障害まで幅広く考えられるそうだ.抗がん剤というのは,良性細胞にも影響を与えるためで,こればかりは人によって違うらしく,その都度対応するしかない.また2週間の休薬期間を設けるのも,良性細胞を復活させるためだそうだ.ただ TS-1 というカプセル材を使用した時は,点滴よりも副作用は少ないとうかがった.先生は多分口内炎ができるくらいではないか,と仰ってたけど,まあそれは明日からのお楽しみ(苦しみ?か:苦笑)一方,シスプラチンを使った時の最も典型的な症状は吐き気だそうである(辛そうだ).家内が「髪の毛は?」と聞いたところ,胃がんの抗がん剤治療では抜けません,と言われた.これは内心嬉しかった.
結局は副作用の程度にもよるのだが,月曜からまず7日間 TS-1 を試し,8日目にシスプラチンを投与し副作用をチェックした時点で左程問題がなければ,退院し外来治療に切り替えましょうということになった.もちろん退院イコールこれまでどおりガンガン仕事をせい,ということではない.免疫力が落ちているから,家で大人しくしてろってことだ.最後に主治医の方から「スタッフ全員で全力を尽くしますから」と仰って下さった.こちらも「どうぞよろしくお願いします」と頭を下げた.ついでに「理工学部の先生がたも注目されています」と付け加えたのだが,これは余計な一言だったか.
昨日は二人の嬉しい見舞客が来てくれた(別々に).二人とも会社勤め時代の同僚と後輩で,仕事の関連は殆どなく,むしろ趣味で繋がった仲である.同僚の方はアナログ感覚満載で,入院が決まった翌日に「この勝負,手段はどうでもいいから,勝って下さい」と,手書きハガキを送ってくれた(嬉しくて泣きそうになった).入社が決まってすぐの集まりのときに,二人ともアコーステッィックギターが好きなこと,コーラスも好きなことが分かり,瞬間打ち解けてしまった.こちらが「ハードフォーク」だ言えば,「やはりアコースティックロックでしょう」と延々と米国の音について教えてくれる.不協和音の入ったコーラスにもこだわりがあった:笑.5年くらいデゥオをやったが,あの頃の時間は濃密だったね.
二人ともあまり演奏はしないのだがジャズも好きで,実は2日前の金曜日も,一緒に東京国際フォーラムに,カルテット (ハービー,ロン,ウェイン,ジャック) を聞きに行く予定だったのだ(その三週間前にはパットとブラッドにいった).20代の頃は本当によく連れ立ってコンサートにいったが,その後お互い留学や転職を繰り返して45才くらいまでは殆ど音沙汰なく過ごした.ここ数年,またより?を戻して,一緒にコンサートに行ってるのだけど,笑うくらいに,お互い変わってない.いつか暇になったら,また Ventura Highway, Horse with No Name をやりたいものだ.こちらの腕は落ちてないから!
コンサートは最高に格好よかったそうだ(そりゃそうだろう).そしてこちらの予想では,コンサートパンフレットを買って来てくれる筈だったのだが,残念ながら売り切れだったそう.かわりに,ハービーがジョニーミッチェル(同僚は彼女も大好き)をフィーチャした 新しい CD を持って来てくれた.如何にも彼らしい選択だ.Many Thanks. 今日のことは忘れないだろうな(村上春樹のジャズネタ本もよかった!).
もう一人の後輩の方は,大学の部活(一応体育会)の後輩でもあり,所謂プロレスオタクで,某プロレス団体の放映番組はすべてビデオで持っているくらいのマニアだ.こちらは,ただの一般的なファンであるが,彼とはよくプロレスや格闘技を見に行った.(さすがに忙しくなった最近は行かないけどね).大学時代,お互いスポーツ刈りで後楽園ホールのリングサイドで観戦し,場外乱闘の際,普通の観客が逃げるところ(自分は逃げた)を,凶悪レスラーの背中を叩こうとしていた輩である.さすが後輩である.お見舞いに格闘技雑誌他を持って来てくれた.このセンスはキミしかあり得ない.すばらしい.ありがとう.
写真は,今回は二つ.昨日いただいた CD, 本,格闘雑誌,それから昨日今日のキャンパス祭で使われた,研究室のシンボルだそうである.このあたりのパロディのセンスは毎年のことながら最高だ.
明日から抗がん治療が始まるということで,今日は全部で10名を超える見舞客があり,午後は明日らの活力をたっぷり注入いただいた.母,家内の方のご両親,長弟夫婦,近くの研究室の秘書さん,研究室出身の助教さんたち,それからびっくりだったのが,上記同僚が当時の仲間に連絡してくれたらしく,2名本当に駆けつけてくれた感じだった.大感謝.なんか子供の誕生会のときより一杯プレゼントをもらった気がする.中には70年代のロック雑誌から,最近の写真集まで,ここにはもう掲載する余裕もないが,明日からベッドで楽しめるものが机上に満載である.すっかり頑張る準備が整ったかな.大感謝!!
夜になって看護師さんがやってきて,ご飯の前に手洗いしました?と聞いて来た.ゲゲッ,以前の会社で一緒だった女性との話に夢中になり忘れたやんけ,こういうのは習慣ですからね.はい.力だけをつけてもだめ,細心の注意も必要ということだ.少し反省.明日から初めての体験,化学療法が始まる.調子が悪ければブログは更新しないし,良ければするかも知れない.どうなるか分からないけど,左程不安でもない.戦い前夜として,多くの方から十分な活力は得た.一人で闘うわけではない,後はなるようになるだろう.See you soon.
投稿者 ngcoryell 時刻: 19:10
2007年10月20日土曜日
Standing Ovation
土曜日: 休養2日目.昨夜は鈍いような漠然とした痛みではなく,キュッとしまるような,感覚が鋭敏になっているような感じで目覚めた.痛いというよりは不快感.でも不思議なことに朝食をとるとやんわりと落ち着く.このまま調子が上がり,懸案の欧文誌の査読を一つ終わらせた.1対1となった3番目の決着をつける役割を某有名誌から依頼されたので頑張った.
さて,Ipod touch を発売と同時に買ったのでそれを病院に持ち込んでいる.touch になり,wi-fi による internet 機能が追加され,net から直接アクセスして楽曲が買えるようになった.あまりこれまで iTunes store に足を運ぶことはなかったのだが,暇つぶしにブラウズして驚いた.20台の頃レコードで持っていたお気に入りのギタリストのアルバムがそこに出てたのだ.かなり前に CD-ROM 化はされていたのだけど,買い逃したまま廃盤になり,中古ですらネットに出回らないので,しょうがなくレコードからデジタル音源に変えようか,と思っていた矢先であった.こんなことってあるんだね.
早速ダウンロード購入.このアルバムから2曲程昔演奏したことがある(相棒のセメント君は元気かな).実はこのブログの全体タイトルはその一曲からお借りしたものであり,URL は自分の頭文字とこのアーチストの名前をくっつけたものである(音楽ネタは書き出すと延々長くなるので,体と心に余裕ができてからね).今日のタイトルと写真もこのアルバムから.
面白いことに,ngcoryell をキーワードにして google で引いてみると,このサイト以外に2つ引っかかった.一つは,youtube にこのブログのサイトから投稿されていた(誰だ!).多分ロボット検索でこのサイト名を引き出して,ロボット的に投稿したのだと思われる.その割には,公序良俗に反するようなものでもなく単なる普通のビデオ,いまいち意図不明.
もう一つは傑作.現在 CMS (Contents Manegement System) を仕事にしている会社が増えて来たが,blog keyword visualizer というものを扱っている会社の HP にて,そのソフトのデモとして,「データベース」をキーワードとしている blog を検索した結果が紹介されている.なんと検索された10のデータベースの一つとして選ばれたようだ!なんのこっちゃ.
http://bkv.so-net.ne.jp/keyword/データーベース
さすがにもう古いので検索されないと思うが,このブログをデータベース関連ブログと判断するあたり,信頼性はないなあ:笑.ちなみに,「教員のデータベースと患者のデータベースがオンラインでデータ交換できない」ような内容のことを書いたためだろうね.
今日も多くの来客があった.大阪の母,東京で就職した姪っ子,加えてその昔民間企業で働いていたころからずっと親しくしている友と後輩.一方大学では,キャンパス祭をやっているようで,先生抜きでも盛り上がっていると連絡をいただいた.嬉しい(特に夏前から大学を休みがちだった学生も来ているようだった!).夕方予定通り,主治医の先生から詳細な病状の説明と治療方針の説明があった.大筋に変更なし.これらについては明日書きます.
今夜8時20分.中日が巨人を3タテしそうで,気分がよい.今日は暑いくらいだったが,明日も晴れて欲しいなあ(キャンパス祭で出店で頑張っている研究室の学生のために).
投稿者 ngcoryell 時刻: 20:24
2007年10月19日金曜日
1週間
金曜日: 今日から3日間は基本的にオフ.自宅に戻ってもいいそうなのだが,土曜日は治療方針を聞きに出てこなくては行けないし,まだホームシックにはなっていないので病院で過ごすことにした.土日にお見舞いに来られる方もいるしね.入院した当日にも「明日は日曜なので外泊でもいいですよ」と言われたので,現状体の内部は別として,まだ十分に動けるので自由にして下さい,ということのようだ.(これから大変なので今のうちに家に戻っといて,ということも含むのかな)
昨日の腸バリウムの後,なかなかバリウムが抜けず腸が詰まった感じが続き,従って胃の中のものが次に進めず,眠るまでは非常に辛い夜であった.普通に寝ても駄目,横向いたらもっと駄目,ソファにお腹を突き出すようにして寝ればまだまし,寧ろ立っている方がいい?と悪戦苦闘の数時間後,最後の下剤が効いてお腹のはりは収まり,ようやく横になれ,そのまま眠った.残念ながら夢の中も同じような感じで:苦笑,目覚めの悪い朝であった.こういう時は先行きがすごく不安になる.
朝起きてすぐメイルが届く(5時半).うちの家内より日頃一緒にいる時間の長い先生からだ.「今日行くけどいいか」ということだったので,すぐに welcome の返事.すぐさま,「朝5時半に入院患者が即返事を返すな」,と怒られた:笑.この先生少し気が小さく,3時からの面会時間を忘れて2時に来て,受付で断られ,やむなく,そーっと足音を忍ばせ,誰にも見つからないように部屋に入ってきたそうだ.その様子が頭に思い浮かぶね.大先生はそんなこと一切気にせず,午前中に皆さんどうどうと入ってくるのに.
この病院,残念ながら(ラッキーなことに?)病棟への入室については,No Security である.もちろん vip 病棟は別なのだろうけど.またドクター,看護師も人手不足で常に忙しく走り回っているので,実質面会はフリーである(黙認状態).しかも再三院内放送で流れるように,非常に盗難が多いようだ.この継ぎ接ぎ状況を見るにつけ,抜本的な対応はなかなか難しいかな?と思う.施設担当常任理事の先生は常に頭が痛いことだろう.
話戻して,来て下さった先生は学科幹事でもあり,長引いた時の大学への手続き,研究室関連の話,それから今後の治療方針の見通し(化学療法を始めるので休みが長くなる)等を話した.何度も書くが,外の空気と交わるときが一番元気になる.加えてまたお花を頂戴した.感謝.この間は,紫と黄色を基調にした組み合わせであったが,今回は白とピンク.部屋がますます明るくなって気分が和む.その直後に看護師さんから聞いたのだが,化学療法が始まると生花は厳禁だそうである.免疫力抑制されている中で,どうしても菌を持ち運び安いかららしい.ともあれ日曜日まではセーフなので部屋を明るくしてもらおう.
今日で入院後一週間が終わった.あっと言う間だった.ブログもとりあえず3日坊主ではなかった.ベッドに座りながらタイプすると,より肩,背中がこることもわかった(当たり前だね).体は,治療していないので良くなりようがないのだが,とりあえず痛くて苦しむことも左程なかった.体が入院に馴染んで来た.あと2日体力を温存すれば,悪者退治が始まる.
投稿者 ngcoryell 時刻: 17:24
2007年10月18日木曜日
気分は曇り後晴れ
木曜日: 昨日の夜はやはり下剤が効いて,一晩中下腹部がゴロゴロしていた.また普段より多めの水をとったためか何か圧迫感もある.余り寝付けず朝を迎えた.今朝は朝6時に看護師さんが座薬を持って来てくれた(これがとどめの下剤).座薬を自分でいれた経験はないと伝えると「では介助させていただきます」と,久々?に若い女性にお尻を見せることに(ポッ).
腸にバリウムを入れて写真をとる検査は,思いの他苦痛であった.バリウムを均等に散らせるためにグルグル診療台の上でグルグルまわるわけだが,胃の中に腫瘍を抱える身としては高速回転が結構負担,加えて下腹部がパンパンなためもっさりとしか回れない.それからお尻のチューブ挿入による異物感.一方で,ぐるっと回る時にお尻のチューブが足にひっかかって外れないかな?なんて,苦しんでいる割には余計な心配をしてみたりする.
一つエピソード.胃や腸のバリウム検査をやったことのある方ならわかるが,時々診察台の上で頭の方が下がることがある.当然落ちそうになって,サイドのバーや突起にしがみついて耐えることになる.ところが今日は突起が固定されていなくて,本当にズルズル落ちていった!まじ!と思ったところで先生が飛び出て慌てて固定.お尻にチューブさしたまま落ちていきたくはないよね:苦笑.
バリウムだけは(個人差はあると思うが)なかなか出てこないと辛いものである.胃の時と違って今度は,飲むところと出すところが同じ.なので検査終了後,チューブを抜く前にとれる限りバリウムを吸引していただいた.後は便所で時分でひねり出す.検査が終わったら,森田健作風技師の方と話しがてら部屋に戻る.放射線科と工学部で画像を使いながら何が一緒に研究できないかとの話になった.食道の幅と食べ物の通り易さや速度等の相関を今とっておられるそうだ.うん無事戻れたら何か一緒に研究したいものだ.
部屋に戻ったら疲れ全開.昨日あまり眠れなかったこともあり,昼食後少しお昼寝モード.うとうとしてきたところで,主治医の先生が「写真奇麗にとれてましたよー」と入ってこられた.「明日は学会で失礼しますね」神戸で学会とのこと.そう言えば11月12月とこちらも京都で2つ学会があったな,とちょっと懐かしむ.
今日も看護師さんによる,副作用についての勉強会があった.「読みましたか?」「点滴の時の注意事項にはなんて書いてありましたか?」久しぶりに先生に当てられ(高校以来?)しどろもどろに答える.うっ劣等生だ.「うがい,手荒い,歯磨きだけは本当に大事ですからね,今日は何回歯磨きしました?」もはやたじたじ。頑張って病院にいる間に習慣をつけます.
午前中に前学科主任がやはり御自分の検査の都合でたちよって下さった.面会時間なんてあるようでないんだね.同僚の先生とお話すると,やっぱり元気になってくる.お話をうかがっていると,遥かに向こうの方が複雑なご病気をお持ちのように思える.十分に盛り上がったところで,「野口さーん,腸のお検査ですよ」とインターラプト.ちょっと残念.(定期検査等で)この病院に来る教員の方は多いはずで,また職場の先生にはとなりのビルにある学会にゆかりのある方が多いから,当分は退屈しないだろうね.
夕方家内とほぼ同時に,東京に出てこられたついでということで,また同僚の先生がきて下さった.授業をほぼ一つ任してしまった若い先生.元気づけのフルーツをいただいた.抗がん治療が始まると,(つわりのように?)吐き気が多くなるそうで,その結果口臭も酷くなると今日習った.そんな時にはフルーツ(特にレモンね)をたべて口元をさわやかにしておくのも効果的だそうだ.来週に備えてたっぷりと備蓄ができたわい.すなおに喜ぶ.多謝.
さて土曜日に先生方から,検査結果と治療方針を正式に伺う以外は,明日から3日間は最後のオフ.体力づくり.週末は大阪の母や姪,元卓球部の後輩,それから研究室からもちらほら来てくれるよう.忙しくなるかな.
投稿者 ngcoryell 時刻: 18:34
2007年10月17日水曜日
爽快な一日
水曜日: 今日は明日からの検査のためにひたすら腸の中を空っぽにするのが仕事.昨晩から今朝にかけては,胃が暴れるわけでもなく感覚的には極めて順調.今日はスカッと晴れて,日当りも風通しも良いこの部屋は快適である.冗談でなく,自分が調子が悪いことを忘れるような爽快さだ.このまま時が流れてくればいいのにと思う.
朝6時から病院は動き始める.多くの入院患者さんがこの時間に起床し,また看護師さんたちも活動を始める.自分はだいたい5時頃には目覚め,頑張って5時45分くらいまではベッドにいて,昨日の夜9時から朝までに入ったメイルをチェックする.だいたい30くらいでうち半分は spam メイルかな.まだまだお知らせしなければいけない人は多いのに気づく.なるべくメイルを誰かにフォワードして代わって対応してもらっている.
で,6時過ぎから廊下に患者さん達が列を作って並び始める.何の列かと言えば,入浴・シャワーの予約と血圧測定のためだ.血圧についてはすでに触れたので省略,ちょうど引っ越しした部屋の真ん前が入浴室で,その部屋には体重計,身長計,洗濯機,乾燥機と入浴場がある.特に駄目と言われない限り,このフロアの患者さんは自由に入浴でき,その順番取りのための行列.毎日朝入浴室前のボードに30分毎に名前を書き入れることができる.写真はそのボードであるが,朝9時から夜9時までの早い時間から埋まっていく(ちょっと不思議).自分は浴槽にまだ入れるので,なるべく遅めに入って温かいうちに寝ようとか思うのだが.他の方は,介添えの方がいる間にシャンプーをしよう,とかの事情で早めの予約になるのだろうか.このあたりはいずれわかるに違いない.
午前中に,昨日も来てくれた同僚からメイルが舞い込み,GPS のように:笑,今渋谷(ラッシュ),着いた,窓見て,と教えてくれる.窓見ての時はタイミングを逸したのだけど(うつらうつらしてた),離れのエコー検査場に向かう通路から昨日の花が飾られているこの部屋が見えたので(ここは2階で花は少し窓から離れていたのでホントかな!?)顔を出せということだったらしい.それには応えられずゴメンナサイ.彼女が検査を終えて再び,暇?,ってメイルが届く.実際暇だったのでほいほいと,一応髪をといて:笑,薄手のオレンジのトレーナを羽織って(パジャマ隠し),地下1階のところで朝食につきあった(ホットミルク美味しかった.ありがとう).いろいろよしなしごとを話して see you again.最高の気分転換だった.
部屋に戻ると,師長さんが僕を見て,「何処にいらしてたんですか?」と言ったので,怒られたのか思いびっくり.恐る恐る聞くと,なんと名誉教授の先生が部屋を訪ねられたそうだ.早速院内放送を流してもらった.30分後無事お会いできた.ご自分の検査のついでにお寄りいただいたみたいだ.この先生には,ご退職後も野口研のメンバーとして,研究に関して様々な面からアドバイスをいただいている.もう本当にディクショナリーな方である.今の野口の年くらいが一番危ないのでお大事に(御自分も経験があるそうだ),研究でお手伝いできることがあれば,と仰っていただいた.確かに任せて来た助教の方にはちょっと荷が重いテーマもある.この申し出は本当にありがたい.大感謝.
更にしばらくして,主治医の先生が来られた.だいたいの治療方針を再度うかがう.詳しくは部長先生と一緒に土曜の4時に家内と説明を受ける.どうやら7日間飲み薬をのみ,1日点滴,これを3,4回繰り返して2週間休憩,ということのようだ.最近は点滴薬よりも,飲み薬で,胃がんの治療に実績を挙げているものがあるらしい.飲み薬だと点滴よりも副作用が少なめなので,様子を見て,外来で抗がん治療にする可能性もある(つまり退院)とうかがった.これは意外であったが,今のような(外見)元気な状態が続くのであれば,確かに病院のベッドの占有は無駄だだろうね.ただし治っての退院でもなく,免疫力は低下しているので,自宅で抗がん治療ってことになるのか.経済的には万々歳.家族的にはもしや迷惑!?
今日はその他,昨日のインターンの学生さんが,また別の先生と一緒にやってきた.実技指導らしい.打音のチェックをこと細かに指導されていた.音の違いで内蔵の場所,胃や腸にたまっているガスの有無,内蔵の触診の変化を探るらしい.インターン君まだまだ固く,ついでに力が入りすぎてちょっと痛い.先生の方が動きが大きいのにソフトタッチである.大事なのは指先に力を込めることだそうだ.
(ところで,昨日医療看護短期大学と書いたのは医療看護学部の間違いでした.そうだった学部になったのであった.ご指摘感謝)
これから最後の下剤を飲んで,明日は朝6時に座薬が待っている.今日はサッカーがあるみたいなので,それを見ながら横になろう.
投稿者 ngcoryell 時刻: 17:45
2007年10月16日火曜日
大学病院
火曜日: 昨日もまた夜中に少しお腹がしくしくした.昼間は不思議なくらいおとなしいのに夜になるとうずく感じ.また,これまでも家では(低反発)ベッドを使っていたが,やはりベッドが変わったことによって背中や腰が痛くなって来た.体型に合わせて変形してくれるといいのだけど,そうはいかないね:笑.体が慣れるまでにはまだ時間がかかるだろう.
昨日の夜気づいたのだが,簡単に入れていたワイヤレスネットワークが,引っ越しした部屋からはアクセスできなくなっていた.看護師さんから,前の部屋の隣のホテルのような建物は「新棟」ではなく「研究棟」だとうかがった.「研究する人は新しい建物使えるんですよね..」「病院の母屋の方は建て増し継ぎ接ぎだらけで...」病院の維持経費の問題はよく聞く話題だけに,ただただうなづくばかり.話戻して,このあいだ乗り入れたネットワークは,研究棟から微弱に届いていたものだったのだろう.(これで 3.6 mbps の USB modem を大活躍させることができる)
今日は午前中にインターン研修中の学生さん達が来た.ここは大学病院なので,教育ももちろん司っている.昨日部長さんが「危ないことはさせませんから」と仰ってたが(そんなこと当たり前だ!),今朝実際に聴診器を当ててもらったり,触診をする手がぎこちなく緊張しているのがよくわかる.5年生というから大学院1年生と同じか...うちの学生たちには肩を揉んでもらっているけど:笑,朝汗を噴き出しながら診てくれるので,「先生はそんな感じではないよ!」「もっと僕に覆いかぶさるよ」とからかってみると,「はっ,大変失礼致しました.」と恐縮しきり.如何にも世間でイメージされるうちの大学の典型的な学生さんであり,キミの好感度は良好である.当分この棟にいるそうなので,元気なうちに?鍛えてあげよう.
それからウチには医療看護短期大学もあり,看護師さんの卵たち4名(女3,男1)も挨拶に来た.うちで言えば2年生なのかな.若い!看護大学の先生に,「1週間このフロアにいますので,どうぞよろしくお願いします」と頼まれた.よく考えるとこちらが彼女たちに「よろしく御願いする」わけで何か妙な感じだったのだが,「精一杯意地悪しましょう」と答えておいた.とたんに病室の中が明るくなった.今朝は実は少しお腹がはって少々めげていたのだが,少し若さを注入してもらった感じだ.
午前中に担当のお二人の先生が来られてだいたいの方針が決まった.詳細な治療計画は土曜日夕方いただくことに.今週は結局検査だけ.「一応腸も診ておきましょう」ということで,またバリウムを飲むことに.今度は口からではなく,逆,つまりお尻から飲むそうである.相手が腸だけに,中身を奇麗にしておく必要があり,今日の夕方から下剤責めにあうようだ.トホホ!!
今日は仕事場の同僚以外にも,学会関係でお世話になっている方に思わぬお見舞いをいただいた.花が増えまた明るくなった.気分転換にどうぞと「脳」の本もいただいた.(知り合いの先生の本かと思ったが,もっとメジャーな方のだった:笑)非常に読み易い文章で,一コンテンツの長さも適当で,1/3ほど読んだ.このような余裕はこれまでなかったなあ.
最後に看護師さんがおいていてくれた,化学療法のマニュアルを読む.副作用のオンパレードが記載されていた.いやはや.ともあれ眠ろう.
投稿者 ngcoryell 時刻: 19:12
2007年10月15日月曜日
早くも引っ越し
明けて月曜日.もう長年の習慣で5時間睡眠が身に染みているので,どうしても朝まで1,2度程起きてしまう.2時頃ちょっとお腹を痛がっている夢をみて目が覚めた.っていうか,痛かったんだろうね.6時に起きたときはそうでもなかったのだが.
前にも書いたが,この病院は,自分でできる測定は自分でしなければならず,体温計も看護婦さんが持って来てくれるわけではない(昔水ぼうそうから急性腎炎をおこして入院したときはそうだった,でもあの頃は所謂アナログ水銀体温計で,落としたらガラスと水銀が飛び散って危なかった,だから管理されていたのだ.今はデジタルが当たり前で部屋に備え付け).自分で測って自分で記録.血圧もそう.自動測定器まで行って自分ではかる.
定期健康診断のときは,いつも1回目はすごく高く,3回くらい測って,ようやく正常血圧の上限値くらいで落ち着く.なんてことが多いので,相手が機械なのにも拘らず不必要に緊張.昨日の朝も夜も1回目はかなり高かった.2回3回と測っても(昨日は休みだったので練習:笑)あまり変わらない.そうか,落ち着くよう話しかけてくれる看護師さんがいないので効果がないんだ.分かり易い自分に苦笑.ナースステーションの人々も廊下を歩く患者の方も,病院で血圧を下げようとガチャガチャやってる人を見て不思議(不審?)だったろうね.
ちなみに,月曜日の朝1の血圧測定は,一発でそこそこの値.やったぜ.と思ったのだけど,直後蓄尿の量を調べに来た看護師さんに,「ちょっと量が少ないですね,いつもこんなものですか」と言われてまた少しへこむ.この後朝8時に若いあんちゃん先生が診察に来てくれた.「そろそろ検査が終わり最終治療方針をお話する頃です.ご本人以外にも付き添っていただきたいのですが,奥様だけでいいですか?」「Super Sure(もちろん日本語で)」.カウントダウンが近いか.
今日の検査は,超音波エコー.そう教職員定期健康診断でやるのと同じ.「6日前にやったぞ,そのデータ使えよ!」と言いたかったけど,なかなか定期健康診断の情報をとって来れないらしい.システムの問題?かなんかわからないけど(きっと教員データーベースとオンライン化されてない?),見事な連携の悪さに!?な気分なのだけど,これはまあ仕方ないか.定期健康診断と精密検査では目的が違うだろうし.自分も,自転車操業で学会開催を引き受けたときに,「web からの投稿形跡がありません」「**が OK といったので直接メイルで送ったけど」「そんな話うかがってません」といった連携の悪さの経験があり,それと似ている.つまり最初のシステムデザインが悪いってことですね.
エコーの後,午前中に頑張って査読を一つ完了.editor はあまりにも短期で戻って来たのでびっくりしたことだろう.ようは,やる気と時間です.にしても,まだまだ一杯ある.蓄尿ならぬ蓄論は多い:苦笑..
お昼終わって,いきなり部屋の引っ越しをした.この間のトイレ事件が引き金になって修理することにしたらしい.今度の部屋は反対側の個室なのだけど日当り良好.基本的には同じレイアウト.違いは前の部屋は板張りだったし,衣紋掛けも木だった.今度は床はリノリウム?衣紋掛けも金属に代わり,少しモダンに,というか日当りと引き換えに無表情,無機的になったって感じかな.写真は,前の部屋の便所.いかにも古い和式便所の便器だけを今時の洋風に代えただけのトイレでした(ウォシュレットとヒーターはついてた).前回水が溢れた時に,水面が上昇して便器から溢れただけでなく,便器のまわりからも水が漏れてたので,さすがに修理を決めたようだ.っていうか,よくここまで壊れないでもってたなあ.衛生第一の病院にしては少々おそまつ,でもまあ何となく味があってこういうのも好きです.
夜主治医の先生(冷血美人女医)が訪ねてくれて,エコーの結果肝臓は大丈夫です,と伝えてくれた.早ければ水曜から遅くとも来週から抗がん治療を開始する見込みだそうだ.明日夕方同僚二人が来てくれることになった.今から楽しみ.早く寝よう.(子供と一緒だね.)
投稿者 ngcoryell 時刻: 19:57
2007年10月14日日曜日
今日は日曜
14日: 日曜日は病院もお休み.したがって体温とか血圧など,自分で測れる以外の検査はなし.治療はまだ始まってないのでもちろんなし.というわけで,とても暇な日になるかと思ったけど、意外に時間はとんとんと過ぎていった.
午前中は,せっかく始めた blog なので,昨日とその前3日間を追加した.振り返りながら書いているためか,無駄に?長くなる.読み返してみると,きっと恥ずかしいことも書いているのだろうけど,当事者感覚で客観性が麻痺しており,読み返しても特に気づかない.まあ自分の記録のようなもので,公開するわけでもないから良しとしよう.将来振り返る時があれば(あって欲しい),赤面するくらいの方がリアリティがあるさ.
検査はないが蓄尿を始めた.抗がん治療は結構腎機能に負担を与えるそうでなので,それに耐えれるか腎機能をチェックするようだ.
昨夜は少々お腹がしくしく痛んだけど9時間良くねた.体力勝負になることもわかっているので,元気なうちに体力が減らないよう,1)良く寝ること,2)よく食べること,3)適度に運動すること,を自分に課した.3)はまあ病院内巡回くらいしかできないけど:笑.
2)について,今回は消化器系の病気ではあるけど,今のところ機能はしているので食事制限はなし.普通食で,ご飯(大)と副菜がバランスよく出て,夜はデザート付き.この内容,クオリティは部屋のランクによるのだろうか.失礼ながら,職場の食堂よりは美味しい.写真は今日の昼食.スパゲッティミートソースとコールスロー,ポタージュスープ.
午後は少しテレビを見て,後は iPOD touch で音楽と Video Pod Cast を楽しみながら休息.音楽はニューシネマパラダイス(12月に演奏できなくなったんがとても残念).Video の方は,Steve Jobs の Standard 大での有名な講演.講演の中で,がんで余命3ヶ月から6ヶ月と宣告されながらも,なんとか手術できる状態にまでなり,そして復帰した,とのエピソードが含まれており,ちょっと胸に沁みた.
夕方家内到着.今日は夜に姉も来るそうだ.あっという間に夜が更ける.
投稿者 ngcoryell 時刻: 17:22
2007年10月13日土曜日
いざ入院
10月13日: 普通に起床.ゆっくり湯につかり,朝食をとって(ホットミルク,食パン,リンゴ甘煮),入院の準備を再開.途中でメイルチェック.査読依頼が来てる.頑張ってやると決意,他のも合わせてプリント.入院に関わる書類を埋めて ready to go.
8時40分頃,家内の運転で出発,東名から首都高に入ってからやや渋滞.でも問題なし.外苑前でおりてすぐ.むしろ病院の駐車場の方が時間がかかった感じ.渋滞さえなければ,極めてアクセスがいい.
手続きはあっと言う間に終わり病室へ.古い建物(50年くらい?)の個室.パイプがむき出しで,今のオフィスと似ている.でもこちらの方が壁が塗り直してあり奇麗.となりの新棟はモダンなビル.きっとホテルのようなのだろうが,値段が全然違う.
いろんな方に説明を受けるが,やや上の空の自分に気づく.細かいことは後でいいか,って感じ.いまどきの学生と同じではないかと反省.感じのよい,ちょっと軽そうな!看護師(若い男性の方)さんに,検査や薬のことを伺う.いろんなアンケートに回答.精神的な質問が多いので驚く.「今回のことがストレスになってますか?」「これまでの人生どうでしたか?」など
さっそく検査.今日は普通の健康診断.心電図,X 線,採血.検査の帰りに地下一階の購買店を見学.レストラン,コンビニ,お惣菜店,パン屋,万(よろず)屋(死語?!)があった.患者さんもみかけるが,むしろ病院関係者の方が利用している感じ.コンビニは24時間営業.
午後から主治医の先生方から病状の説明を受ける.informed consent. 入院後の担当の先生はお二人.主治医は,いかにもブラックジャックに出てきそうな冷血美人女医さん(あくまでもイメージ,内科医なのでこの方は手術をしない).丁寧に様子をうかがう.(病巣の写真を見るかと言われたけれども,それは辞退)結局
・胃の周りにも浸潤?しているので,抗がん剤で抑えて小さくしてから切る.
・腹水が少し出ているので心配.それについても調べる.
・抗がん剤による治療はワンクール3,4週間,それを2,3クール行う
・体に合う薬が出てくるまで,その繰り返し.
長丁場だ.予想通りだ.頑張るしかない.「希望はあります」との言葉をいただいたので,戦う決意.ここで,余命いくばくとかの話になったら,かなりへこんでいただろう.
しばらくして,もう一人の担当の先生も来られた.こちらの方は大学出て4,5年くらいと見た.若い(主治医の方はもう少し上かな).診察を受け,話をする.きわめて好青年(同じ質問の繰り返しに飽き飽きしたけどね).担当の先生方には恵まれたようです.
夕方さらに2人の先生が,今度はベテラン,訪れる.1人は外科の先生,医学部と共同研究をされている学科主任の先生から連絡があったそう.外科にお世話になるのはまだ先だけど,心強いし,気にかけていただいてありがたい.本当に皆さんに感謝.
もう一人の先生は,今週急遽内科でみていただいた先生.早急の化学治療が必要との判断をうかがった.今日は,医者と患者というより,お互い先生として話をさせていただいた印象.同じ内容を(多分:苦笑),家内にも電話して下さったようだ.最近の化学治療の進歩,それから本人の体力が必要なこと.まさしく「闘病」,闘うということを身をもって知る,ということね,とは家内の弁.Exactly. Do my best.
夕方,トイレの水が詰まるハプニング.検査に使う水溶紙が溶けなかったため+こちらがその状態で2回目の水を流したため.係の方がこられたときは紙は溶けてつまりがとれていたので,犯人を特定できず.(推理小説に使える?)安普請だから下に漏れるの,と師長さん他4名くらいでせっせと掃除(感謝).下に漏れるところまで,今のオフィスに似ている.
体力勝負とわかったので,夕食は完食.9時消灯に驚いたが,人間眠れるものです.
写真は,病院内オフィス?とベッド.病院内のワイヤレスはちょっとザルでいつでも使える.(これは不味いのではないか?),机にそびえるのは,MAC PRO. 机の奥の方にあるのが ワイヤレスが駄目な時用の USB HSDPA MODEM. こちらもばっちり.これは定額で 3 MBPS くらいでるので安心.手前にあるのが iPod touch.これで準備万端.威勢のいいうちに紹介しておきます.
投稿者 ngcoryell 時刻: 21:00
2007年10月12日金曜日
前夜まで
10月10〜12日: 入院を早くて来週からと予想し(実際は週末土曜日だった),週末までにすべての仕事の引き継ぎを終えることを決意.授業,学内役職,各種外部との打ち合せ,国内学会,国際学会の講演や役職,それから依頼講演等,すべてキャンセルあるいは代行の段取りが必要.この3日間は,気が張っているのか体調は左程悪くはなかった.
ほぼ毎日,授業の調整,外での仕事の調整,卓球関係の調整で1日が終わる.親しい人には正直に語る.みんな心配してくれ,励ましてくれる.治った人の話をいっぱいしてくれる(死んだ人のことを話してくれた人もいたけど).みんな何かできることはないかと聞いてくれ,御願いした仕事は気持ちよく(仕方なくか?)引き受けてくれる.本当に感謝.またこちらからの連絡メイルが届くやいなや,返事を書く以前に直接多くの電話を頂いた.勝って戻るとの約束を一杯させられた.これらの方に報いるよう何とか頑張りたい.
海外はどうしようかと迷ったけど,家族ぐるみで親しくしている UCLA の先生,この10年,ときにタッグを組んで一緒に国際会議の開催や研究,教育交流を進めて来た NUS の先生,11月に訪問し,今後の交流を深めようと思っていた SNU の先生方,にだけ連絡を入れた.最初の二人はさながら戦友なので,正直にメイルに書いた.すぐに激励のメイルが帰って来た(なるほど英語ではこうやって励ますのか!).「全然心配してない,ゆっくり休め,皆がついている,また会おう,頑張れ.」ただただ感謝.
12日バリウムの検査に病院へ.病院では定期健康診断の同僚の方々によく出会う.軽くいつものように会釈をする.11時の予約だったが,9時に行って放射線科の先生を訪ねてくれ,とのメモを火曜日の先生から渡されれていた.行くと森田健作風?の技師の方が現れ,しっかりとアテンドしてくれた.結局11月予約だった CT を1ヶ月早くうけることができ,またバリウムによる撮像検査も昼までに受けることができた.森田健作風技師曰く「やはり仲間意識があるのでしょう」「連絡とりあって万全のサポートですから」多少誇張は入っているだろうけど,気弱になっている身分にはとても暖かい.
12日の検査が終了時に内科の先生と電話でお話しした.これが外来検査の結果の通達ということであった.大至急入院して治療開始することを再確認した.9日に渡された検査日程では,通常のルートだと最悪1ヶ月は遅れていただろうから,この進展には驚くと同時に,対応していただいた先生方に大変感謝したい.
とはいえ,こんなに早期に多くの検査を受けるということは,ただならぬ状態であることくらい,いくら楽観的な自分でも気づく.この件で,ちょっと家で家内と口論.家内も楽観的?に,すぐに「早く手術」「外科」等の言葉を発して鼓舞してくれるのだけど,病院にいった2日間,手術するようなことは全く耳にしなかったので,「診断結果が出るまで手術のことは口にするな」と怒ってしまった.火曜日の検査以来,最悪の事態まで考えているので,時折マスコミに出てくる「早期生還」のようなパターンでなかったときのギャップを恐れて口に出たのだろう.やはりストレスはあるのだ.
一応万が一のときのために,今入っている保険関係を調べた.10年程前に国内生命保険(掛け捨て)から,外資系の生命保険に変更した.掛け金は5倍程になったが,変更しておいてよかった.入院時の保険も別途加入していたので,個室にも何とか入れそうだと思う(経済的に).
最後に研究室の皆を集めて,事の次第を柔らかく伝えた.つとめて明るくしたので,もしかしたら,皆すぐに戻ってくると思っているかも知れない.もちろん戻ってきたいのだが.幸い研究室の方は,助教である二人の教え子が切り盛りしてくれるだろう.負担をかけるのが申し訳ないが,これを機会として,実力と経験値を上げてもらいたいものだ.ありがとう.
金曜日,入院前最後の授業を行った.やはり体力は落ちつつあるのか,非常に疲れた.明日からの入院で助かった.家に帰ったら、娘が,家族の思い出のつまった写真立てをくれた.全9枚.一言メッセージには,高かったんだぞ.感謝しろよ.とあった.戻ったら10倍返ししてあげる.
投稿者 ngcoryell 時刻: 23:55
2007年10月9日火曜日
プロローグ
10月9日: 作夜は,胃の上部が,重く押され軽く戻されのような感じでつらかった.
今日は強引にいれてもらった定期健康診断内視鏡検査.病院では,緊張感からか,胃に1ヶ月程続いていた不自然な感覚はなかった.
最初のエコー検査で,女性の技師?さんに,腹水がたまってるといわれた.お酒の飲み過ぎなど問題ないときもあるけど,重大な原因が時もあるといわれた.
次の胃カメラ.また眠りそうだった.挿入と抜く時は朦朧としていたけど,途中は何とか頑張って起きてた.大勢でモニターを見てるのがわかった.
終わった時,事務的に「結果は後日お知らせ」と言われたので,先生に少しだけ様子を聞いてくれといった.
先生は,炎症のひどいところがある.悪い腫瘍でしょう,とさりげなくいった.
まだボケていたので何と反応したかは覚えていないが,先生は来週内科検診の予約をとりましょう,といってくれた.お願いした.
しばらくして,後の順番だった人が2,3人先に帰られて(セーフの方,いいな),中に呼ばれた.すぐに内科に回ってくれとのこと.
内科にまわると,すぐに診断.若い医者ははっきりと(後で分かったが,それほど若くなかった),悪性の腫瘍,はやく入院してはやく直そう,ということで,がんとは言われなかったが,至急血液検査,検査予約,入院予約をしてくれと言われた.頭の中が興奮していたせいか,時間が立つのも忘れて,すべてこなした.今時の病院は,会計計算,請求,会計,薬,等システマチックなのに驚いた.入院時のことを考えるとき,やはり仕事をしたいので,1人部屋を頼んだ.高いね.
この間に家に電話.えーっと驚いていたけど,めそめそするタイプの人ではないのでその点は安心.これは僕も,息子も,娘もそう.ちなみに家に帰ったら,早速胃がんについて調べたことを教えてくれた.
大学に戻り,秘書に概要を話す.ちょっとメソッとしてた.不思議に,体調はよく(アドレナリンが麻酔になってる?),5限の授業をこなす.最近運動によって汗をあまりかかなかったのに,今日はかいているので不思議だった.
あと教え子の助教二人に後のことを頼むといって帰宅.
軽く話をしながら食事.早めに寝たが,2時に覚醒.連休中寝すぎたせいか.2時間程うつらうつらしながら,6時に目が覚めた.
投稿者 ngcoryell 時刻: 23:59