土曜日: 今日も天気は快晴.そろそろシスプラチン(味方なのに,時々中でも暴れる:笑)の副作用も治まりつつあるという感じ.このシスプラチンのおかげで今回も2kg も体重が落ちた.ちょうど5週間前の同じ頃やはり同様に減っていた.まあ食べれないから当たり前か.食欲も戻って来たので,ちょっと増やしたい.まあ地道に.
スラムダンクに続いてスポーツものの小説を楽しんだ.「一瞬の風になれ」は本年度本屋大賞や吉川英治文学新人賞に輝いた秀作で,高校の陸上競技を対象にした小説だ.スポーツが好きなら是非ということで,同僚が送ってくれた.3冊の書き下ろしを1日で一気に読ませるタイプの内容なのだが,目がショボショボしていたため:苦笑,1日に読めるところまで読んで,4,5日で読み終えた.最後は花粉で涙目になっているのか,感動でそうなってるのか.
この本は前から気になりつつ買う余裕もなかったが,こういう時間をとれるので自宅療養も捨てたものではない:笑.陸上競技と言えば,個人競技の代表的なスポーツで,究極の目標はオリンピック金メダルやインターハイ優勝とかになるが,それは一部の才能溢れた人達の目標である.多くの凡庸の人達には,如何に自己ベストを更新するか,が大切なことであり,結果として,試合の勝敗がついてくる.
この本では,主人公を通して,短距離走のための技術とメンタルのかかわり合い,試合や記録会における成長や挫折が3巻を通して細かに書かれている.が,これらはどちらかと言えばサブ的なもので,メインは高校の陸上競技部(団体)としてのチームの素晴らしさ,個人競技でありながら,個性のぶつかり合う部員が互いに切磋琢磨し,チームとしての共有感を持つことの感動であろう.
特に,陸上競技の中での「団体競技」であるリレーがこの本の華となっている.個人の能力以上に「バトン」を渡すことの重要性が(技術的に限らず)描かれており,リレーというののは,試合に出ている選手から選手へ渡すだけのもでなく,世代から世代へ,そして部員から部員へ受け継ぐものだと述べられる.特に最後に,卒業したばかりの OB から補欠選手も含めて6本の鉢巻きが渡されるところには,グッとくるものがあった.
一方で,この本には地味な陸上競技部の地道な努力と感動が書かれているわけではなく,登場人物は,十分な運動能力や才能をすでに有している.このあたりは,「スラムダンク」に通じるものがある(以下括弧).運動能力,身体能力は高いが陸上競技は素人の神谷(桜木),天才的な素質があるが,あまり努力しない市ノ瀬(流川),そのライバルの仙波(仙道)そしてサブプレーヤの面々.
このように能力の高い選手達が集まって,インターハイを目指すところも共通している.これが単なるスポーツヒーロものや根性ものになっていないのは,いずれも主人公だけでなくサブプレーヤも含めたその努力や挫折の日々についても,きちんと書かれているからであろう.またやはり過去に挫折を味わった,人間味溢れる監督が率いているチームでもある.
陸上競技における風は,自らが走ることによる生じる風であり,一瞬の風になれることの喜びをこの本から感じることができた.勢い自分の高校や大学におけるクラブ活動を思い出していた.自分は色んなことに手を染めていたので,ここまで一つのことにストイックにはなれなかったなあ,とか,イベントの最後でいつも歌ってた寮歌を結婚式で皆で歌った時は泣いた(家内も)とか.やはり多感な時代を共通の目標に向かって頑張ってたときの仲間は今も良い友人だ.
改めて,一人で頑張るわけではない,ということを感じさせてくれた本であった.感謝 to all.
2007年12月8日土曜日
一瞬の風
投稿者 ngcoryell 時刻: 23:24